狐の嫁取り!時空をこえて出現、花嫁と提灯行列が街をそぞろ歩いた日【神戸市】
WRITTEN BY Hinata J.Yoshioka
巷では「大ゴッホ展」が人気を博しているようですね。もちろん行って来たよ〜という人も、神戸で開催中の「大横尾辞苑」には、もしかしたらまだ行けていないのでは?
日本が世界に誇るアーティスト、横尾忠則の新しい展覧会が一月末から始まっています。現在、ドイツやフランスでも展覧会が行われ話題となっている横尾さん。最近は海外からの訪問客も特に多いという横尾忠則現代美術館に行って来ました。

横尾忠則という人が生み出す芸術作品は、本当に幅広くて奥深いんだなぁということを改めて再認識させられる今回の展覧会。その一番の特徴はと言うと、このド派手なピンク色の本。
これが鍵を握っているんですね〜。タイトルは展覧会と同じく「大横尾辞苑」ということで、今回の展示作品をかなり詳しく説明してくれている図録です。

面白いのは、普通はこういった図録は展覧会の記録を残すために付随して作られたりするものなのですが今回は逆で、図録のダイジェスト版が展示されているといった感じです。
いつもはここ特有の、美術館コスプレといった恒例のお遊び要素があるのですが、今回はこのド派手なピンクの本に秘密があるようですね。ということで本を片手に、早速GOです。

あいうえお〜ABC順のタイトルが付けられた絵の横に、この図録から抜粋された説明書きがあります。いつもの展覧会は説明的なものが少なく、私は感覚的に絵を捉えて自分勝手に想像しながら楽しんでいたので、これはちょっと斬新です。
さてここで、今回の展示の中でも特にずば抜けて驚いたベスト3をご紹介します。まずは一つ目。横尾さんが手掛けた有名ミュージシャン達のレコードのジャケットが幾つか展示されているのですが、それがもう今や伝説級のブッ飛んだ内容なんです。

ラテンロックバンド「サンタナ」の、1973年に来日時のライブが収録された3枚組みレコードのデザインを手掛けた横尾さん。「サンタナのジャケットは、なんかとんでもないものにしたいね」と意味深な言葉を放って出来上がったものが…
広げると裏表合計22面、横幅が2メートルを超えるという前代未聞のありえなさ!製版代だけで高級車が買えるくらいの請求書がソニーに届いたのだとか。

レコードジャケットの実物が展示されていたのですが、それが何なのかをよくわかっていなかった私は危うく目の前にある伝説を見逃す所でした。大横尾辞苑の解説で面白おかしく当時の状況を書いているのが笑えます。
他にも、YMOが発足するきっかけとなった細野晴臣のレコード「コチンの月」のジャケットも展示され、会場では音楽も流されていました。

ジャズ界の大御所、マイルスデイビスのレコードも手掛けていたり、禅寺の環境音を収録した瞑想用アルバムなどあらゆるジャンルのデザインを制作されていて、とにかくその世界観の幅広さが凄い。
世界で一番最初に作られた「ピクチャーレコード(盤面に柄が印刷してあるもの)」は、横尾さんが作ったのが始まりで、それがビートルズにも影響を与えたという噂もあるのだとか。(※今回は展示されていません)

そして、伝説的作品の二つ目は、1971年に実際に東急百貨店の《Xmas Paradise》で、セール・キャンペーンの為に制作されたボスターなのですが、時代的に今や絶対に出来ないでしょうといった内容がこちら。
楽園タヒチなどの島々を背景に、全裸女性像がコラージュされたもの。そこに歳末セールなどの文字は一切なく、「東急百貨店の外壁2面すべてを覆い尽くす巨大なヌード女性の垂幕は、道ゆく人々を驚かせた」と、当時の様子が大横尾辞苑にも書かれています。

そして、伝説的作品の三つ目。「目玉廊下」と題されたアートがこちらの美術館4階で異彩を放っているのですが、その元として使われていたのが、何と電車の外壁アートだったというお話です。
2004年、JR加古川線の全電化記念に横尾忠則デザインのラッピング電車が走ったそうなのですが、目玉廊下のド派手なデザインがそれだったということを私は初めて知りました。

この電車はJR山陽本線の加古川駅から丹波市の谷川駅へと至る路線で見られたそうで、「田舎風景の中を走る様子はインパクト絶大で、大いに話題となった」と大横尾辞苑に記されています。
こういった感じでどの作品も驚きの内容で、解説を読みながら、その当時に発表したリアルタイムで出会って驚いてみたかったと悔しい想いにさえなりました。

作品もさる事ながら色々と仕掛けた横尾さんご本人がそもそもブッ飛んだ存在だったのだと、解説を読みながら改めて確認したのですが、まぁこれは数ある横尾伝説のほんの一部のようですね。
そういった横尾忠則の生き方や哲学などに触れられる著書も数多くあるのですが、最近出版された「運命まかせ」が新潮新刊ランキングでも一位になったそうで、横尾さんのFacebookでも紹介されていました。

横尾忠則の凄さは、今や世界でもかなりの広がりを見せているようです。現在、フランスのパリではカルティエ財団がコレクションしている横尾作品が展示中なのだそう。
ドイツのベルリン郊外では「ポスター展」が人気を博しているそうで、人々の好反応で会期も延長、分厚い図録のポスター集も人気で入手困難とか。

過去には2015年、スイスで手塚治虫の原画と横尾忠則のポスターの二本柱で日本のサブカルチャーを紹介する展覧会も開催され、そういった流れも海外人気の源流にあったのではと伺いました。
「4階のアーカイブルームは事前に予約すると入れるのですが、わざわざ海外から来られる方もいらっしゃいますよ」

そう話す山本さんは、横尾忠則現代美術館の開館から14年を見守ってきたベテランです。学芸課長さんであり今回の企画担当、大横尾辞苑の製作者でもあります。
「アジアからはもちろん、アメリカやフランス人の訪問客も多いですね。フランスからは横尾さんを研究しているという人も先日やって来ました」

パワフルに活動されて来た横尾さん、もう90歳というお歳でご本人曰く「耳はほとんど言葉が聞き取れず、眼鏡をかけても文字が2ページでかすれて見えなくなる。鼻は年中花粉症で、喉は喘息で、手は腱鞘炎で5感全滅です」と報告されている中で、
「やっと第6感で生きています。猫と同じです。猫になりたいと思っていたので丁度よかったです」というコメントをされているのがとても印象深かったです。

今を生きる伝説のアーティスト横尾忠則。ゴッホもいいですが、日本人としてこんなにも身近に輝かしい星があるのに、それをこの場で今見ずしてどうしますか。ぜひ横尾忠則現代美術館に足を運ぶべきでしょうと、私は心の中で叫んでいます。
ということで。「大横尾辞苑」はまるで書籍のような図録ですが本屋では手に入らないとのこと、売り切れる前に横尾忠則現代美術館まで行ってみてはいかがでしょうか。そして、本を片手に伝説の作品たちをその目で目撃してみては。
横尾忠則現代美術館HP (外部リンク)
「大横尾辞苑」
期間:2026.1.31 sat. – 2026.5.6 wed.
住所:兵庫県神戸市灘区原田通3-8-30 [MAP]
TEL:078-855-5607(総合案内)
時間:10:00-18:00(入場は17:30まで)
観覧料:一般800円 大学生600円 70歳以上400円 高校生以下 無料
※他、各種割引きあり
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)
年末年始
展示替え期間
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旅なしに人生は語れない、ノマド系フォトライター。国内から世界各国まであちこち歩きまわって取材する、体当たりレポートを得意とする。趣味は美味しいもの食べ歩き、料理、音楽、ダンス、ものづくり、イベント企画などなど、気になる物には何でも手を出してしまう。南国気質で、とにかくマイペースな自由人。
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