0
%
大阪府 -泉南市

【泉南市】野菜の販路も多様性の時代!農業もクリエイティブな領域へ『泉南農業塾』が支える挑戦

KEYWORD
WRITER
旅する日々の記憶と記録。matka08

「本格的に農業を学びたい方も、家庭菜園をはじめたい方も、みんなで楽しく学んでいます」と話すのは、泉南農業塾・塾長の立道 智惠(たてみち ともえ)さん。

その言葉の通り、泉南農業塾は、誰もが無理なく、それぞれのペースで農業を学べる場所。
現役の農家さんが講師となり、土づくりから種まき、収穫、出荷といった実践的な農業技術を、一年かけて丁寧に指導します。
丹精込めて育てた野菜で食卓を彩ることはもちろん、販売を通して地域と繋がることも可能です。

働きながら無理なく学べる

泉南農業塾の講義は、毎週火曜日泉南市内の学習用の畑で行われます。

塾長の立道さんによると、通える範囲に住んでいる方であれば、いつでも入塾や見学が可能とのこと。現在、20代から70代まで、様々な年代の生徒13人が、それぞれの目標に向かって楽しく農業を学んでいます。

講師の南さんは、現役の農家さん。自身の経験をもとにわかりやすく指導します(画像提供:泉南農業塾)
講師の南さんは、現役の農家さん。自身の経験をもとにわかりやすく指導します(画像提供:泉南農業塾)
人参の種まきの様子。深さ1~2センチのまき溝を数本作り、種を1センチ間隔で筋状にまく(画像提供:泉南農業塾)
人参の種まきの様子。深さ1~2センチのまき溝を数本作り、種を1センチ間隔で筋状にまく(画像提供:泉南農業塾)
種が隠れる程度に薄く土をかぶせ、水やりをします(画像提供:泉南農業塾)
種が隠れる程度に薄く土をかぶせ、水やりをします(画像提供:泉南農業塾)

生徒のみなさんの背景は多様で、たとえば、自営業の傍ら農家でアルバイトをして技術を磨く人、看護師を引退して家庭菜園をはじめたい人、さらには、お米の値段が高いから自分で作ってみたいという人まで、年齢や経験を問わず、誰もが気軽に農業を学べる敷居の低さが、泉南農業塾の魅力です。

リスクに備えた手厚いサポート

農業の基礎知識や経営のノウハウは、月に一度開催される座学で学べるので安心です。

JA大阪泉州南部営農センターでの座学では、農業経営のノウハウを熱心に学ぶ生徒や卒業生の姿が見られました
JA大阪泉州南部営農センターでの座学では、農業経営のノウハウを熱心に学ぶ生徒や卒業生の姿が見られました

今回の取材で特に印象的だったのは、泉南農業塾の卒業生や、これから農業をはじめようとする人たちに対する手厚いサポートです。

泉南農業塾では、研修を修了した方がスムーズに農業経営をはじめられるよう、さまざまな支援体制を整えています。

・農地の確保:卒業後、希望者には泉南市内の農地を借りられるようサポートします。

・技術・経営指導:農業経営をはじめた後も、定期的な相談会や座学を通じて、経営ノウハウや栽培技術の継続的な指導が受けられます。

・保険・共済制度:万が一に備え、農業災害補償制度(農家が加入する公的な保険制度)など、各種保険・共済制度についての情報提供や加入手続きのサポートも行っています。これにより、自然災害や病害虫被害などのリスクに備えることができます。

NOSAI大阪(農業共済組合)の担当者から保険制度について、税理士の池田さんからは「青色申告」について学びました。

また、現役農家の南さんによる栽培技術の指導は、農業を営む中で実際に直面する困難を想定した内容となっており、初心者でもわかりやすいと感じます。たとえば今回は、近年の猛暑に悩む参加者に向けて、育苗管理の具体的なコツが教えられました。

南さんが育てたキャベツの苗。根鉢の形成が良い苗を育てるポイントは、通気性をよくしてあげることだと話す
南さんが育てたキャベツの苗。根鉢の形成が良い苗を育てるポイントは、通気性をよくしてあげることだと話す

苗を植えたトレイの底を地面から浮かせて空気に触れさせることで、気温の上がり過ぎを防ぐ方法や、身近な材料を使った簡易的なハウスの設営方法など、実践的ですぐに役立つ内容ばかりです。

参加者からの質問に、自身の経験をもとに答える場面では、試行錯誤を通じて見つけ出した最適な解決策をわかりやすく伝えていました。
自らの経験に基づいた実践的な指導は、これから農業をはじめる人の道しるべとなり、スムーズなスタートを支えています。

「ばーばの野菜が一番おいしい!」の声が聞きたくて

今回、農業に希望を抱く2人の参加者にお話をうかがいました。
1人目は、元心理セラピストの赤井 千鶴さんです。

8人のお孫さんがいる赤井さんは、大阪市内で10年間心理セラピストとして活躍した後、京都へ移り4年間農業を経験しました。その後地元である泉南市に戻ってからは、家庭菜園を続けていましたが、本格的な就農を目指して泉南農業塾に入塾しました。

「農業をはじめようと思ったのは、パートナーが『やりたい』と言ったことがきっかけでした。実は、観葉植物すら枯らしてしまうほど、以前は植物にまったく興味がなかったんです。でも、人は食べたものでできているから、安全で美味しい野菜を孫にも食べさせてあげたいと思うようになりました。『ばーばの野菜が一番おいしい!』と孫に言われるのが、何よりの幸せです」

赤井さんは、化学肥料や農薬を使わず、出来る限り自然栽培に近い方法で野菜を育てることにこだわっています。農業の魅力は、単に作物を育てて販売するだけでなく、独自の価値を加えて販売できることだと話します。泉南農業塾では、畑での講義が終わった後も、生徒同士で有機農法について学ぶ場を設けています。
作物の育て方も決められた方法だけでなく、各自が自分に合ったやり方を自由に探究しているのです。

赤井さんは、すでに農地の手配も済んでおり、来年からは産直サイトや直売店での販売をはじめる予定。準備中のリーフレットの写真撮影は、塾の仲間が担当しました。

赤井さんの携帯電話には、制作中のリーフレット画像が大切に残されていました。ブランディングやデザインも、自分の思い通りに作り上げています
赤井さんの携帯電話には、制作中のリーフレット画像が大切に残されていました。ブランディングやデザインも、自分の思い通りに作り上げています

同じ目標をもつ仲間は、夢を語りあったり、励ましあったりできる、心強い存在だと話します。

育てることの奥深さに心惹かれて

2人目は、令和5年12月に泉南農業塾を卒業された中山 翔二さん。

飲食店勤務を経て、農業の道に進みました。
趣味でプランター栽培をしていたことが、農業に興味をもったきっかけだそうです。

「プランターで葉野菜を育てていたんですが、種をまく時期すら知らなかったですね。たとえば、レタスの種を夏にまいてしまったり。本来は、秋や冬にまくものなんですよ。そんな試行錯誤を繰り返しながら、菊菜や水菜の栽培に初めて成功した時は嬉しかったなぁ。みずみずしくて、すごく美味しかったです!」

中山さんは、泉南農業塾で学ぶほか、農家でボランティアをするなど、精力的に就農に向けて取り組んできました。2年前に一反(いったん)の農地からスタートして、徐々に規模を拡大しているそうです。農業の魅力は、自分で道筋を立てて、試行錯誤しながら作物を育てることだと話します。自然相手なので失敗も多いと語りながらも、育てることの奥深さや楽しさに魅了されている様子が印象的でした。

今回のインタビューに答えてくれたお二方のように、自身の理想とする農業の形を追求する農家さんが増えることで、地域農業の未来はより豊かなものになると感じました。

各種手続きのサポートや先輩農家さんとのパイプ役も

新規就農に際して、一人では難しく感じる行政手続きも、泉南農業塾の運営メンバーが丁寧にサポートします。

「泉南農業塾」の運営メンバー。塾長の立道 智惠さん(中央)、講師の南 直樹さん(左)、事務局長補佐の枡野 杏美さん(右)。事務局長の井上 陽子さんは、撮影の日は不在でした
「泉南農業塾」の運営メンバー。塾長の立道 智惠さん(中央)、講師の南 直樹さん(左)、事務局長補佐の枡野 杏美さん(右)。事務局長の井上 陽子さんは、撮影の日は不在でした

また、長年の経験をもつ先輩農家さんとの交流も、就農を成功させる上でとても重要です。
運営メンバーがパイプ役となり、土地の手配から地域での人間関係の築き方まで、きめ細やかに支援します。

そして、育てた作物の販売方法も、一昔前とは違った多様性が感じられます。

マルシェは、市場価格に左右されず、自ら価格を設定できるのが魅力。おしゃれな店づくりも楽しめます(画像提供:泉南農業塾)
マルシェは、市場価格に左右されず、自ら価格を設定できるのが魅力。おしゃれな店づくりも楽しめます(画像提供:泉南農業塾)

かつては、農作物を流通させる経路は、JA(農業協同組合)や市場への出荷がほとんどでした。
しかし、近年ではインターネットの普及消費者のニーズの変化にともない、農家自身が多様な販路を持つことが可能となっています。たとえば、地域の直売所や道の駅に直接出品するほか、オンラインサイトで全国に販売したり、地域のレストランやホテルと直接契約して納品したりする方法も増えています。

泉南農業塾は、新たな一歩を踏み出す農家さんを支援しており、その取り組みは、地域のレストランオーナーからも注目され、見学者が訪れるほどです。

〈今後のイベント予定〉

・11月9日(日)なでしこりんくう済生会まつり2025

・11月23日(日)泉南まるごとフェスティバル

詳細が決まり次第、泉南農業塾 公式Instagram(外部リンク)でお知らせいたします。

農業もクリエイティブの領域へ

「農作物を作る」という生産活動が主だった農業が、現代では「どう届けるか」「誰に食べてもらうか」を考え、実践することが重要になってきています。
販売戦略や顧客とのコミュニケーションまで、農業はもはや単なる生産業ではなく、自分のアイデアや工夫をカタチにするクリエイティブな仕事へと進化しているのです。

(画像提供:泉南農業塾)
(画像提供:泉南農業塾)

そして何よりも、自分で育てた農作物が誰かの食卓に並び、笑顔と幸せを届けられる喜び。
それこそが、農業の道を歩む人たちを支える、かけがえのない原動力となっています。モノづくりが好きな方、自由に、そしてクリエイティブに働きたい方は、泉南農業塾の扉を叩いてみませんか?

一人じゃないってこんなにも晴れやかな気持ちになるのだと、泉南市の大きな空の下、改めて感じた取材でした。

【基本情報】
泉南農業塾
公式Instagram(外部リンク)
泉南市公式ホームページ(外部リンク)

◇問い合わせ・申し込み
泉南市 市民生活環境部 産業振興課内 泉南農業塾
TEL:072-483-9974  FAX:072-483-0206
メール:nourin@city.sennan.lg.jp
募集期間:随時募集
対象:泉南市内で営農を考えている方。
学習ほ場の実習、講習会場まで通塾可能な方。
スケジュール:講習開催日/原則毎週火曜日
10月~6月 9:30~12:00
/ 7月~9月 7:30~10:30
講習期間:入塾から概ね1年間
受講料:年間24,000円

申し込み方法:受講申込書に必要事項を記入の上、直接担当者に提出または郵送(切手を貼付した返信用封筒を同封)またはメール(申込書を添付)にて申し込み。
なお、受講申込書は泉南市ホームページからダウンロードまたは市役所産業振興課にて配布しております。

選考について:受講申込書の内容により、塾長等の意見を踏まえ選考を行う場合があります。

取材協力 泉南農業塾 事務局のみなさん
*記事内容は取材当時のものです。

温かいご協力を受け賜りました塾生のみなさまに、心より感謝申し上げます。

この記事を書いた人

旅する日々の記憶と記録。matka08
ライター

旅する日々の記憶と記録。matka08

大阪・泉州在住。
7年の広告制作ディレクションを経て、2022年から4年間、Yahoo!ニュースにて地域記事を執筆。
計8回の最優秀記事賞(MVA)を受賞。
2026年春、同メディアの筆を置き、現在はウェブメディア等での執筆を続けながら、自身のマガジン『Blank.』の創刊に向けて、日々奮闘中。
フィルムカメラとノートが相棒。

このライターの記事を読む
BACK