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WRITTEN BY 奥河内から情報発信

2024年4月に開校した佐野中学校の夜間学級が、この秋も生徒を募集しています(募集期間:8月25日(月)~9月10日(水))。
昨年の秋にご紹介して以来、生徒数は36人から89人へと大幅に増加しました。
「夜間中学のイメージが変わった」「佐野中学校の夜間学級はとても温かい」といった声が多数寄せられており、そのアットホームな雰囲気が多くの方に驚きと感動を与えています。
こうした温かい学び舎の秘密を探るべく、今回は生徒と先生にお話をうかがいました。
夜間中学は、家庭の事情などによって義務教育を修了できなかった人たちや様々な理由から本国で義務教育を修了せずに日本で生活をはじめることになった外国籍の人、また、形としては中学校を卒業していても不登校などの理由で十分に通うことができなかった人など、多様な背景をもつ人たちの学び直しの場として、再び需要が高まっています。
みなさんは、夜間中学と聞いてどんなイメージを抱きますか?静かで暗い校舎、あるいは、事情を抱えた人々が集う場所でしょうか。
ところが、佐野中学校の夜間学級は、想像以上に明るく熱気に満ちています。
ここは、夢を追い求める人が集い、年齢や性別、国籍の壁を超えて共に学ぶ場所。
そんな彼らを支える先生たちもまた、熱い想いを胸に教壇に立っています。
夢あふれる3人の生徒と、情熱に満ちた3人の先生へのインタビュー。その言葉の数々から、佐野中学校の夜間学級の真の姿を感じ取ってください。

―現在のお仕事と家族構成を教えてください
仕事は物流関係で、2人の娘と一緒に日本に住んでいます。上の娘は中学2年生で、下の娘は小学6年生です。
―夜間中学に入学した動機は?
私は日本語があまり上手ではなく、日常生活に不便を感じていました。娘たちの懇談会では、先生の話がよくわからず、ただ笑っているだけでした。夜間中学で日本語が学べると聞いて、上手に話したいと思い入学しました。でも、やっぱり日本語ってむずかしい! 先日、娘が「あ~、おなかがペコペコ」って話していて「ペコペコってなに⁈」ってなりました(笑)。
―日本の印象は?
街がきれいでゴミがない!(笑) 生活もしやすいですし、人も親切です。
―実際に入学してみて、楽しいことや大変なことは?
楽しいことは日本の様々な文化を体験できることです。大変なことは、仕事や子どもの世話で毎日学校に通えないことです。
―夜間中学で学んで、できるようになったことや役に立ったことは?
日本語が上達しました。自信を持ってママ友と話せるようになり、なかなか入れなかったママ友の輪に入れるようになりました!
うれしい!
―先生方の授業はわかりやすいですか?
時々、わかりにくいところもあります。でも、先生方はとても丁寧に教えてくれます。本当に私たちを子どものように大切に教えてくれていると感じ、とても感動しています。
―将来、ここでの学びをどのように活かしたいと考えていますか?
娘を連れて日本に来て、多くの方に助けていただきました。本当に感謝しています。少しずつボランティア活動に参加して、困っている人たちを助けたいと思っています。

―現在のお仕事と家族構成を教えてください
小中学校のALT(Assistant Language Teacher)として、子どもたちに英語を教えています。
息子は、関空でグランドスタッフをしています。
ALTとは、教育委員会から派遣される英語の先生のこと。「言語指導助手」を意味する言葉で、ネイティブスピーカー、または、それに近い英語能力を持つ人が担当します。
―夜間中学に入学した動機は?
日本の文化を勉強したいと思ったから。
―日本の印象は?
便利。安全。日本の人は正直でやさしい。
―実際に入学してみて、楽しいことや大変なことは?
夜間中学では、大変なことは何もないですよ。日本語は、書いたり読んだりする方が難しいですね。
―夜間中学で学んで、できるようになったことや役に立ったことは?
街に出て、日本語の看板を見るたび、「あれ習った!」と思うとうれしくなるよ。入学前は日本語はあまり得意ではなかったけど、ここに来て日本の人に自分の思いを伝えられるようになりました。
―先生方の授業はわかりやすいですか?
わかりやすいよ。わかるまで教えてくれる。
でも、明日になったら忘れちゃうけど(笑)。
勉強は苦手です!
―将来、ここでの学びをどのように活かしたいと考えていますか?
実は先日、鍵と携帯を忘れて家に入れなくなったんです。あわてて交番に駆け込んで事情を説明しようとしたけど、聞き入れてもらえませんでした。外国人だから、日本語がうまく話せないからだと感じ、悲しくなりました。もっと日本語を学んで、急いでいる場面でもスムーズに伝えられるようになりたいと思いました。

―現在のお仕事と家族構成を教えてください
掃除の仕事をしています。ずっと一人やで。結婚指輪、一度もはめたことないねん。
―夜間中学に入学した動機は?
夜寂しいねん。やっぱりな、人とコミュニケーションとらんかったら寂しいで。民生委員の人に紹介してもらって入学してん。昼間はええねん、仕事もしてるし。夕方になったら落ち込む。家族がいてたら気づかへん寂しさがある。
―実際に入学してみて、楽しいことや大変なことは?
楽しみは、2時間目終わりのパンと牛乳! がんばって2時間目も授業うけな食べられへん(笑)。わたしは、外国の人と仲がええねん。
泉州生まれの泉州育ちで、ガラの悪い泉州弁で話しても怖がられることないしな。
―夜間中学で学んで、できるようになったことや役に立ったことは?
今まで思うことをすぐに口にしてたけど、ここに来て、「こういう時は、こんなこと言うたらあかん」とか、空気が読めるようになったわ。言い合いになることもあるけど、ちゃんと仲直りもできる。
―先生方の授業はわかりやすいですか?
わかりやすく教えてくれるけど、脳ミソがついていかん(笑)。
白血球とか赤血球とか、わけわからん。
―将来、ここでの学びをどのように活かしたいと考えていますか?
歌が好きやから、お楽しみ会で“クソばばあバンド”のボーカルやりたいねん。音楽の授業が楽しい。夏休みも学校に来て、歌の練習してるねん。

―職歴を教えていただけますか?
佐野中学校で3年間、学年主任を務めました。学年主任最後の年に夜間学級が開設されたのを機に、転任しました。
―趣味や好きな食べ物は何ですか?
趣味は、音楽鑑賞と映画鑑賞です。最近観た映画では「国宝」が良かったですね。 歌舞伎を知らない人でもわかりやすいし、伝統芸能の奥深さに感動しました。好きな食べ物は、焼肉! 刺身も好きですね。お酒もほどよく楽しんでいます。
―なぜ、夜間中学で教鞭を執ろうと思われたのですか?
小学生のときに母と観た、西田 敏行さん主演の映画「学校」が、夜間中学で教えようと思ったきっかけです。その映画では、夜間中学の姿がありありと描かれていて、昼間とはちがう「夜の学校」の存在に衝撃をうけました。
読み書きを学ぶ高齢者や、学び直しを望む若者、そして日本で暮らす外国人など、いろいろな人の苦労を知り、力になりたいと思ったのですが、当時はどうすれば夜間中学の先生になれるのかわかりませんでした。
だから、まず教師を目指しました。
―佐野中学校の夜間学級の魅力は?
佐野中学校の夜間学級の魅力は、生徒と先生の距離が近いところ。そして、みんなとても仲が良い! また、いろんな国の人が集まっているので、お互いの文化を知ることができるのも大きな魅力です。

―生徒とのうれしいエピソードは?
英語に興味をもってくれた高齢の日本の生徒さんが、周りの仲間を励ますために熱心に単語を勉強していると聞いて、胸が熱くなりました。
「英語の看板が読める! 世界が変わった!」と喜んでいる姿を見て、新しいことを学ぶのに年齢なんて関係ないんだなぁと思いました。

―職歴を教えていただけますか?
私は佐野中学校出身で、理科の教師として23年間 教壇に立ちました。その後、4年間は教育委員会で教育行政に携わる機会をいただきました。そして、再び現場に戻り、教頭、校長として教育現場の管理職を務めました。
定年後も再任用で校長を続けていましたが、「夜間中学で再び教壇に立ちたい」と思い、2年の再任用期間を残して、転任しました。
―趣味や好きな食べ物は何ですか?
趣味は野球観戦です。私はタイガースファンなのですが、家族はオリックスのファンで。
圧倒的に京セラドームで観戦することが多いですね(笑)。あと、7、8年前からルービックキューブを再開し、小学校で子どもたちに披露していました。私が大学生の時に日本で発売されて、夢中になって遊んでいたのを覚えています。
好きな食べ物はお寿司です。


―なぜ、夜間中学で教鞭を執ろうと思われたのですか?
これまでの仕事は、正直なところ、どこか義務感に追われていたような部分があったかもしれません。ここでは、学び直しを願う高齢者や遠い外国から来た方々の「学びたい」といった純粋な思いを強く感じます。
「今ならまだ教えられる!」そう直感したことが、夜間中学に転任した理由です。
―佐野中学校の夜間学級の魅力は?
学び直しを目的に来られている日本の生徒さんや、日本語を学ぶために来ている外国の生徒さんが、年齢や性別、国籍なんて関係なく、互いに励まし合っている姿に感動します。
日本の年配の方と、若い外国の生徒さんが、名前で呼び合ってるんですよ。見ていて本当に微笑ましいです。

―生徒とのうれしいエピソードは?
授業が「わかりやすい」と言われるのは、嬉しいですが、「わからない」と言われるのも嬉しいものです。それは、真剣に聞いてくれている証拠ですからね。
あと、宗教や文化による食文化のちがいを「生の声」で知ることができるのも面白いですよ。たとえば、イスラム教徒の人たちは、豚肉は食べないけど、鶏、羊、牛の肉は食べる、とか。スーダンの人は、なんとラクダの肉を食べるんですって! 聞くところによると、「草食動物は食べる」らしい(笑)。でも、ゾウは大型だから食べないとか。驚くことに、ワニは肉食動物ですが「水の中の生き物は食べる」らしいです。それも自分で捕まえて!!

―職歴を教えていただけますか?
長南中学校で9年間、保健体育の先生をしていました。
―趣味や好きな食べ物は何ですか?
趣味はゴルフです。スポーツジムでゴルフ好きの方と話したことがきっかけでハマりました。今は60代がメインのコミュニティで楽しんでいます。好きな食べ物はアジアのごはん。父の仕事の関係で、幼少期の頃、シンガポールとタイで暮らしていたんです。家でもよく“タイ料理”を作りますよ。
―なぜ、夜間中学で教鞭を執ろうと思われたのですか?
以前、人権教育を担当をしていた長南中学校で夜間中学の存在を知りました。様々な事情を抱えながらも前向きに学ぶ人たちの姿を見て、自分にも何かできることはないかと考えるようになったんです。また、過去に受け持った不登校の生徒を救えなかった後悔もあり、大人になってからでも「学校っていいな」と思ってもらえる場所を作りたいという思いも、夜間中学で教えることを決めた理由です。
―佐野中学校の夜間学級の魅力は?
生徒一人ひとりの明るさと人間力です。様々な苦労を背負っているにもかかわらず、それを感じさせないほど前向きで、もっと話を聞きたいと思わせてくれます。
合言葉は“We are family”。ここでは、みんなが家族のように名前で呼び合い、国籍で区別することはありません。まるで子どもの頃に戻ったかのような、家族を感じる居場所です。

―生徒とのうれしいエピソードは?
ブラジル出身の生徒さんの言葉がとても印象に残っています。地域の方にご協力いただき、浴衣の着付け体験を行ったとき、「先生、今、夢がひとつ叶いました。ずっと浴衣を着てみたかったんです」と、とても喜んでくれました。
その後、みんなで盆踊り大会に行きました。

今回の取材で、非常に興味深い出来事がありました。
それは、インタビュー中、流暢な日本語で話してくれていた外国の生徒さんが、ふいに母国語で話し出した瞬間、わたしは不安な気持ちになったのです。

日本語で話しているときは、距離が近く感じられ安心していたのに、相手が母国語に切り替えた途端、共通の接点がなくなったように感じ、孤立感を覚えました。
しかし、その時、表情やアイコンタクトがあったおかげで、不安が増すことはありませんでした。

言葉は心を通わせるための大切なツールですが、たとえ言葉が通じなくても、相手の目を見て「知りたい」と願うことで心は通じ合えると実感しました。そして、心が通じ合えば誤解は減り、相手への敬意や異文化への理解が深まるのだと改めて感じました。

佐野中学校の夜間学級では、日本をはじめ、フィリピンやネパール、中国など16カ国の生徒たちが共に学んでいます。互いの文化を尊重し、固定観念を打ち破る異文化交流は、一人ひとりの視野を広げ、大きな自己成長へとつながります。
ここには、多様な人々が互いの尊厳を認め合い、共に学び合う“優しい社会の縮図”があります。
佐野中学校 夜間学級の生徒募集は、9月10 日(水)までです。
詳細につきましては、佐野中学校 公式ホームページ(外部リンク)をご覧ください。
最後に、佐野中学校の夜間学級 教頭 竹田 隆先生の言葉をお届けします。
「最近、メディアで外国人が悪いことをしたと報道が流れるたび、その国籍の人が悪い、さらに外国人全員が悪いという表現に変わります。日本人も外国の方もそれぞれアイデンティティを持っています。個を見て対応してほしいと、強く願っています」。
【基本情報】
学校名(学級名):泉佐野市立佐野中学校 夜間学級
公式ホームページ(外部リンク)
所在地:泉佐野市羽倉崎4-3-12
(Googleマップ参照)
・南海本線 羽倉崎駅 北へ約700m
・JR関西空港線・南海空港線 りんくうタウン駅 南へ約800m
入学資格(入学できる人)
① 義務教育の年齢(満15歳)を超えている人。
② 中学校を卒業していない人、または実質的に十分な教育を受けられないまま卒業した人で学び直しを希望する人。
③ 大阪府内に住んでいる人。府外に住んでいる人は、相談してください。
*外国籍の人も入学できます。
募集学年:原則として1年生からの入学となります。ただし、2、3年生からの入学も認める場合があります。(相談してください)
入学の受付期間:2025年8月25日(月)~2025年9月10日(水)まで(土曜・日曜・祝日除く)。ただし、入学の相談は年間を通して受け付けています。
入学時期:令和7年(2025年)9月
〈入学関係書類の受付場所〉
〒598-0046 泉佐野市羽倉崎4-3-12
泉佐野市立夜間中学校 夜間学級
TEL 072-458-3700 FAX 072-458-3701
〒598-8550 泉佐野市市場東一丁目1番1号泉佐野市教育委員会教育総務課
TEL 072-463-1212(内線2346)
(郵送可。持参の受付 平日 学校 13:00~21:00 教育委員会 9:00~17:00)
*書類点検後、面接日をお伝えします。
〈入学の手続き〉
入学を希望する人は、次の書類を提出してください。後日、面談を実施します。
① 入学許可申請書(様式1)
*上記〈入学関係書類の受付場所〉にあります。
②本人の「住民票の写し」
*コピーでなく発行されたもの。
修業年限:3年(在籍年数については6年以内の卒業を原則とします)
*夜間学級の授業時数は週20時間(1日4時間)です。始業時刻は午後5時30分、終業時刻は午後8時45分です。
取材協力 泉佐野市立佐野中学校 夜間学級
*記事内容は取材当時のものです。
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旅する日々の記憶と記録。matka08
大阪・泉州在住。
7年の広告制作ディレクションを経て、2022年から4年間、Yahoo!ニュースにて地域記事を執筆。
計8回の最優秀記事賞(MVA)を受賞。
2026年春、同メディアの筆を置き、現在はウェブメディア等での執筆を続けながら、自身のマガジン『Blank.』の創刊に向けて、日々奮闘中。
フィルムカメラとノートが相棒。