【千葉市】小さなパン屋、モワティエさん
WRITTEN BY 格さん
毎年モロッコのサハラ砂漠で開催されている「Marathon des Sables(砂のマラソン)」。日本では「サハラマラソン」として知られ、「世界一過酷なマラソン」ともいわれます。なぜなら、舞台がサハラ砂漠というだけでなく、水以外の衣・食・住をすべて自分で背負いながら、約250kmの距離を7日間かけて走り抜く過酷なレースだからです。
そんなマラソンに、日本から約100万円(2024年エントリー時のレート)をかけて参加した人たちがいます。なぜ、そこまでして過酷なレースに挑むのでしょうか?その理由を紐解く鍵が、千葉県・鋸南町(きょなんまち)にありました。

2025年4月に開催されたサハラマラソンに出場した4人が、6月に鋸南町を訪れ、完走報告会に登壇しました。主催したのは、町内にあるカフェ「パクチー銀行」の創業者で、「日本パクチー狂会」会長の佐谷恭さん。彼自身も2015年にサハラマラソンを完走した経験者です。
去年も同様に報告会を開き、完走者とサハラマラソン運営スタッフの8人が登壇。そこに山形県から訪れていたのが、今年の登壇者でもある佐々木朱珠さんです。この報告会に参加して出場を決め、日本人女性の最年少19歳で、サハラマラソンを完走しました。佐々木さんから、「今年も報告会をやるなら参加したい」と連絡があったのをきっかけに、今年も報告会の開催を決めた佐谷さん。
今回の報告会には、過去の完走者や出場希望者が多数集まり、和気あいあいとした雰囲気の中、出場者たちがサハラでの体験を語りました。

佐々木さんは、中高生のときから刺激を求めて日々いろいろなことに挑戦してきましたが、しっくりくるものはありませんでした。そんなとき、サハラマラソンと出会い「これだ!」と思い挑戦することに。サハラマラソンの魅力は、「変な人たちと時間をともにできるのがハッピー」と語ります。
地守亮さんは、サハラマラソン3回目の出場。出場経験者のブログを読んで、「自分では無理だなと思った――。本当に無理なのかな?」と疑問系に変化。ここで無理だと諦めれば、「人生を全て諦めて生きていかなきゃいけない」と思った36歳のときに初挑戦。「3週間の休みがとれて、100万円使ってとりあえずやってみようっていう、変な人たちに会えるのが楽しい」と、サハラマラソンの魅力について話します。
長田秀樹さんは、2019年に一度エントリーしていましたが、出発日が娘さんの小学校入 学式とかぶったこともあり、奥さんの反対に遭い断念。その後コロナ禍を経て、ようやく念願が叶いました。練習では、鎌倉の砂浜で野宿もしたそうです。
松山哲也さんは突然知人に誘われ、「サハラに出る人生と出ない人生、どっちがいい?死ぬときに、出れば良かったって思いますよ」と言われ、ハッとしたそうです。マラソンはやっていなかったけれど、気づいたらエントリーボタンをポチッとしていたのだとか。

今年の参加者は約1000人。そのうちの30%が女性で、完走率は90%だったそうです。毎日30~40kmを進み、3日目か4日目に夜通し歩く「オーバーナイト」のステージが待っています。
「サハラマラソン」と聞くとずっと走っているものだと思っていましたが、歩いている人 たちもけっこういるそうなのです。今年のオーバーナイトは雨と嵐で冷え込み、ここまで150キロ歩き続けたけれど、低体温症にならないために「そこだけランナーになった」と話す人も。
「満天の星空の中を歩けると思っていたのに、嵐で見えなかった」と、残念がりながらも、朝の4時くらいに雨が上がり、「1/3くらい星が見えてきて、流れ星も見えた」と、当時を振り返りながら話します。
早い人は4時間、遅い人で10時間ほどでその日のステージを終え、8時間眠ったとしても6時間くらいの自由時間があるそうです。そう聞くと、なんだか自分でも出来そうな気になるから不思議です。

トイレで使うペーパーの使用料を把握して、荷物を1グラムでも軽くするために、4枚のペーパーで拭く練習をして必要枚数を持参。
食事メニューを考えるのが面倒なので、出発前から毎日カレーを食べて練習し、大会中も毎日カレー。
走る練習はしないけど、どうしたら1グラムでも荷物を軽くできるかをずっと研究。
100キロのウルトラマラソンに3回出場。
1年間、毎月1回トレイルランニングやウルトラマラソンに出場し、全てリタイアしたけれど、1年後に35キロのトレイルランニングをビリで完走。
宮城県から静岡県まで、1年の間に700キロくらいの距離をつないで走った。
サハラマラソンと同じように、1日30キロを7日連続で走るというのを毎月実行。
毎日リュックを背負って歩き、サハラで食べる物を食べて自分に合うものの情報収集。
などなど、みなさんいろいろな面を独自に工夫しながら、サハラマラソンに臨んだようです。1グラムでも荷物を削って、身体さえ動けばいいというタイプと、ちゃんとご飯を食 べて楽しみたいタイプに分かれるという話も出ましたが、あなたはどちら派ですか?

報告会の席で、「サハラ砂漠の入口は鋸南町。そういう町づくりもありかな」と挨拶をした主催者の佐谷さん。彼がサハラマラソンに出場したときは、都内で「パクチーハウス」というお店を経営していました。お店にランナーやサハラ関係者たちが集まり、オーバーナイト練習会を行い、客層がどんどん広がっていったそうです。そんな広がりが、ここ鋸南町で生まれるとおもしろいですね。

完走者たちの話を聞きながら、「歩き続けてもいいなら、私も出られる?」と考えている自分に驚きましたが、報告会後の交流会で、2名がエントリーボタンをポチッとしたそうです。2026年の出場をみなさんに案内したかったのですが、例年なら11月ごろまで申し込み可能なのに、今年は既に定員に達して締め切られてしまいました。
その理由は、来年が40回記念大会だから。申込みが殺到し、初日で1000人が申し込んだそうです。けれど、「サハラマラソンは本番までの期間が長い程楽しめます」と言う人もいるので、じゃんじゃん鋸南町に通って、経験者の生の声を直に聞いて、鋸南町にある鋸山(のこぎりやま)でトレイルランをして鍛えてもらえればと思います。

行って損はない!
日本人出場者30~40名全員と、1時間は一緒に歩こうと決めて全員と話をした。サハラ以後は、アフターサハラを楽しめる。迷っているならしたらいい!
サハラマラソンは、人生を加速させる。サハラに出た瞬間、決断力や行動力があって新しいことをどんどんやっている友だちが増える。
サハラマラソンに出ることによって、周りの人が変わっていい影響を受けて、自分も変わった。
19歳で参加して、人生が変わった。出ることは無茶苦茶価値があると思うから、出るべき!
【店舗情報】
店名:パクチー銀行
営業日:土日
営業時間:12:00~日没まで
住所:〒299-1902 千葉県安房郡鋸南町保田65-2
パクチー銀行公式webサイト(外部リンク)
取材協力:サハラマラソン出場者、パクチー銀行
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バックパッカーで世界を旅して漂着したのは、千葉県房総半島の安房(あわ)。ボロボロ古民家を仲間と改修しながら、犬猫ヤギと暮らしはじめる。安房の自然にどっぷり浸かりながら、アウトドアや暮らしを堪能しつつ、魅力ある人や場所を紹介している。
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