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神奈川県 -横浜市

【横浜市】カフェなのになぜ“ホテル”?店名に刻まれた奥深い歴史とオープンへの想い「桜山ホテルカフェ」

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WRITER
佐原ねお

四季折々の景観美を伝える横浜市本牧の三渓園。2023年、そのほど近くの閑静な住宅街にオープンしたのが「桜山ホテルカフェ」。店名に“ホテル”と入っていますが宿泊施設ではありません。

一体なぜこの地で、この名前で、カフェがオープンされたのかお話を伺ってきました。名前に紡がれた歴史とオーナーの想いを紐解きながら、お店ご自慢の料理とスタイリッシュな和モダンの店内などを紹介させてもらいます。

ギャラリーのあるカフェとして生まれ変わった古民家

取材にあたり、公式サイトで紹介されているよりさらに詳しく興味深いお話を聞かせていただきました。お話を伺ったのは桜山ホテルカフェのマネージャーであり、カフェを手掛けるプロジェクトALTO CAMPO COMPANYのカフェレストラン事業部ディレクターである前島奈緒子さん。

お話を伺った桜山ホテルカフェのマネージャーであり、カフェを手掛けるALTO CAMPO COMPANYのカフェレストラン事業部ディレクターである前島奈緒子さん。

桜山ホテルカフェのオープンは、横浜の歴史背景と深く結びついています。明治時代、横浜山手には外国人向けホテルがありました。その名も「チェリーマウンテンホテル(桜山ホテル)」。山手の丘に立つ、星の形の屋根がついた宿は、外国人でとても賑わっていたそうです。

カフェのパンフレットにも掲載されている当時の桜山ホテルの写真。解体時にみつかったものとのこと。(画像提供:桜山ホテルカフェ)

このホテルはイギリス人から、単身アメリカから帰国したばかりのマサさんという女性に受け継がれます。そのマサさんこそ、現「桜山ホテルカフェ」オーナーの曾祖母にあたる人。

春になると丘には見事な桜が咲き誇り、多くの人に愛されていた場所でした。オーナーはその当時の賑わっていた様子を話としてよく聞いていたそう。

明治時代チェリーマウンテンホテル経営者のマサさん(左)と家族(画像提供:桜山ホテルカフェ)

そんな桜山ホテルも、大正12年に関東大震災が横浜を襲い、あの美しかった丘の桜と共に、建物は跡形もなく消えてしまいます。

(画像提供:桜山ホテルカフェ)

桜山ホテルカフェは、マサさんが養子として迎え入れた男の子と女の子が暮らしていた家。オーナーの叔母にあたる方が移り住んでいた家でもあります。そんな叔母が夢見ていたのが、古民家を活用した喫茶店のオープン。三渓園に近いこの地で、あんみつやソフトクリームが食べられるお店を開くことを夢見ていたそう。

桜山ホテルカフェのエントランス

オーナーはずっと話に聞いていた桜山ホテルに興味が湧き、横浜開港資料館で調べてもらいました。そうすると、話を聞いていた通り、桜山ホテルの電話番号や経営者としてのマサさんの名前が入った資料が確認できたのだとか。

この歴史・物語を継承していきたい。そんな想いもあって古民家を活用したカフェは「桜山ホテルカフェ」と命名されたのです。

すぐ近くにある本牧の桜並木や三渓園は、桜の名所とも言える場所。

桜の縁で繋がれたカフェがオープンしたのは、関東大震災からちょうど100年となる2023年。桜のシーズンをほんの少し過ぎた、うららかな春の陽ざしが照らす日に「桜山ホテルカフェ」として開店しました。

オーガニックにこだわるメニューと和スイーツ

ロスフラワーを使ったドライフラワーのディスプレイが部屋の雰囲気と調和しています。

カフェは、オーナーの想いに感銘を受けたイタリア生まれ横浜育ちのALTO CAMPO COMPANYという、デザイナーズプロジェクトが担当しています。“和”だけれども、イタリアンやフレンチのテイストが入り、料理もインテリアも落ち着きある和モダンスタイル。かつて居留地として賑わった山手の雰囲気とも合っている気がします。

試飲でいただいた「天空茶園のグリーンティー」(HOT/ICED)650円

そのうえで、抹茶やソフトクリームが主役になったあんみつといった、オーナーの叔母にあたる方がかつて提供したいと望んでいた純和風メニューも。

「桜山バスケットランチ」2,980円 ビーツのキッシュは香ばしく、食べ応えもしっかり。キッシュの内容は日替わりになります。

今回はオーガニックメニューの中でも人気だという「桜山バスケットランチ」を試食させてもらいました。この日は色味も楽しいビーツのキッシュに、ポルペッティーネ(イタリア風肉だんご)、グリルした野菜とサラダがバスケットのプレートに収まっています。香りと彩りを与えてくれるハーブも自家栽培。

有機野菜、無農薬、自然農法で作られた食材を使い、できる限りの無添加をめざすオーガニックなメニューを考えているのだそう。野菜も農家から直接取り寄せ、さらにはポルペッティーネのお肉も北海道のオーガニック牛を農家から直接取り寄せているというのだから驚きです。

こちらは上のバスケットをとった状態。カメラを変えて撮影してみました。

前島さんから話を聞いている途中だったのですが、食べながら思わず「話の途中なんですが、このドレッシングが自分好みで驚いてます」と言ってしまいました。きくと、野菜をベースにした自家製イタリアンドレッシングとのこと。

筆者の経験上のお話ですが、オーガニックを売りにしているところは味が薄かったり、量が少なくて物足りなかったりするところも時にあったので、これはうれしい予想外です。

テラス席で撮影された写真も提供いただきました。サラダ横に添えられている器の中がドレッシングです。(画像提供:桜山ホテルカフェ)

「オーガニックきのこの焼きチーズリゾット」もセットになっていて、ボリュームもしっかり。それなりに量を食べたい男性にも満足してもらえるメニューなのだとか。

塩バターキャラメルガレット 1,350円

「一番人気は、無農薬の蕎麦粉は農家さんから直接届き、お店のスタッフが粉砕して作るオーガニックなガレット。野菜ガレットと、パティシエ手作りスイーツガレットはシーズン毎にメニューが変わります」ということで、塩バターキャラメルガレットも試食させていただきました。

塩バターキャラメルガレット(画像提供:桜山ホテルカフェ)

パリパリのガレットは咀嚼音も楽しく、塩味と甘さのバランスがちょうどいいスイーツ。甘すぎないことで、食べ終わった後も爽やかな満足感だけが残ります。オーダーが入る度に焼かれているガレットの原料は、ウユニ塩湖の塩と水、そしてこだわりの蕎麦粉だけ。

今回はスイーツとしていただきましたが、前島さんのお気に入りは「国産サーモンと有機野菜サラダのガレット」とのこと。クリームチーズとの相性がいいとのことなので、ぜひ次回食べてみたいメニューです。

ガレットはヘルシーランチとしても、スイーツとしても食べられるのが魅力。

シモタファームさんのオーガニックハーブティーは780円。お店の名にちなんだ桜のプレートも愛らしいです。

ドリンクに「シモタファームさんのオーガニックハーブティー」も試飲させてもらいました。優しく清涼感のある香りに心から癒されます。こちらも人気商品のひとつとのことで、ギャラリーでも販売されていました。

「シモタファームさんのオーガニックハーブティー」8個入り1,100円(画像提供:桜山ホテルカフェ)

ドリンクは瀬戸田レモンをたっぷり使った「自家製ジンジャーレモンソーダ」も人気で、ホットドリンクとして「ジンジャーレモネード」もあります。ピリッとしたジンジャーとオリジナルシロップの甘さがちょうどよく交わるのだそう。

来店客の7~8割が予約していらっしゃる方なのですが、フラッと三渓園の帰りに寄ってスイーツのみ利用するのも歓迎、子供連れも大歓迎ということ。チャージがかからない個室もあるので、小さなお子さんといらっしゃる方は予約をするのがおすすめです。

季節の桜山 籠ランチ 4,980円 画像提供:桜山ホテルカフェ

また予約をしないと食べられないメニューもいくつかあります。「予約制の籠ランチと籠べんとうは、管理栄養士監修の健康的なメニューで、カラダにやさしいランチとして人気です」と前島さん。

桜山クリスマスアフタヌーンティーセット~2025~ お一人様¥3,990(ティーフリープラン¥4,990)※写真は2名分のイメージで、14:00以降の提供(110分制) 画像提供:桜山ホテルカフェ

そして毎回シーズンごとに内容が変わるアフタヌーンティーも予約制。リピーターも多く、女性の利用は多いものの、男女問わずオーダーがあるそう。1人でも利用できるので、気軽に“ヌン活”しに来てみては。メニューの詳細はInstagramなどでご確認ください。

オープンからこれまで、そしてこれから

季節の息吹と彩りに包まれた情緒豊かな横浜三溪園。着物で園を散策してからカフェに立ち寄られる方も多いとのこと。

カフェは元々が民家だったこともあり、靴を脱いで家にあがるスタイル。誰かのお宅におじゃまするような暖かく優しい居心地がいいと、リピーターの方も増えてきました。

店内の様子 画像提供:桜山ホテルカフェ

明治時代、単身アメリカから帰国してホテルを継承されたという、桜山ホテルの経営者であったマサさん。彼女の養子養女になるオーナーの祖父・祖母は山手のインターナショナルスクールで学び、当時の日本の子供では珍しい英才教育だったそう。

テラス席ではペット同伴で食事ができ、近所の方がペットを連れてよく来てくれるそう。カフェのテラス席にも春が近づくと河津桜やミモザが咲き、ちょっとしたお花見ピクニックも楽しめます。

英語で日常会話をする家だったとのことで、オーナーのお父様も英語が得意でいらっしゃったとか。高校生時代から近所のお子さんたちに英語を教えていました。

桜山ホテルカフェが開業した時には、その生徒さんがいらっしゃって大変喜ばれていたそうです。

江戸時代の引き戸を活用した“玄関”風エントランス

桜山ホテルカフェでは築70年の昭和古民家がリノベーションされた場所を活かし、カフェ以外の体験も楽しめるようになっています。

江戸時代の引き戸を活用した“玄関”風エントランスを入ると、すぐ右手に見えるのはギャラリー。さまざまなアーティストとコラボして、作品の展示・販売が常時行われているのです。

オーガニックハーブティーも販売

アクセサリーや陶器などのグッズ以外に、カフェオリジナルの焼き菓子やお茶なども、センスのいいパッケージに入って販売されているので、ギフトやお土産にも喜ばれそう。

ギャラリー・ショップのみの立ち寄りもOKです。

実はこちらで販売されていた「マコロン」が気になって仕方がなく、購入させていただきました。「マカロン」ではなく、ナッツが入った香ばしく少しハードな食感がクセになる「マコロン」。洋風と和風が上手に取り入れられたこちらのカフェによく似合う、ナチュラル志向のスイーツです。

「マコロン」350円/袋 左から塩・チョコレート・黒豆 ほかにも種類があります。

今回は個室でお話を伺ったのですが、その個室は昔、お茶室として使われていた部屋。そんな歴史もあってお茶教室が開催されたこともあります。

個室の入口がかわいらしくて撮影。店内は、全体的に柱などは昔のままに、壁紙や扉、インテリアなどはデザイナーさん達のアイデアと技術を存分に活かして、センス良くまとまっています。

また食育にこだわる桜山ホテルカフェでは、定期的に食育セミナーも開催。2階がイベントにも活用できるスペースとなっており、管理栄養士が講師となった手作り麹やピクルスを作るワークショップなどが過去に開催されています。

コラボしているアーティストたちのマルシェや、イベント、食育ワークショップなどは、今後も開催されていくそうです。今後の予定はカフェのInstagramでご確認ください。

「桜山ホテルカフェ 十津川村」 画像提供:桜山ホテルカフェ

オーナーの想いと共にカフェを手掛けるALTO CAMPO COMPANY。桜の名所として有名な、奈良の吉野にある日本最大の面積を誇る十津川村で、今年の7月に2号店がオープンしました。

桜繋がりで続いて広がっていくプロジェクト。「いつかはホテルを」という目標もあるのだとか。

これから三渓園は紅葉が美しく映える季節を迎えます。ぜひ散策後に立ち寄って、ちょっとした横浜の歴史巡りをしてみてはいかがでしょうか。

※料金などは取材時の内容となります。

*こちらの記事は、2025年11月21日にYahoo!ニュースにも掲載された内容です。

桜山ホテルカフェ

公式サイト:桜山ホテルカフェ

住所:横浜市中区本牧三之谷32-2

電話番号:045-225-9022

営業日:水・木・金・土・日 11:00〜18:00(LO 17:00)

Instagram:sakurayamahotel_cafe

この記事を書いた人

佐原ねお
「横浜市」の街で出会った誰かの想いと感動を、拾い集めています

佐原ねお

Website: https://holidaytalk.net/

毎日を旅するように生活することを意識し、地域ならではの魅力を探索しています。歴史あるスポット巡りに興味がある一方、流行りモノにも目がありません。

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