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千葉県 -鴨川市

「まだ間に合う」メガソーラー開発と市民の声が問いかける未来。自然環境を守るために【鴨川市】

9月に撮影されたメガソーラー開発現場 ※地権者の許可を得て撮影してます 写真提供:鴨川の山と川と海を守る会
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鍋田ゆかり

2025年秋、千葉県鴨川市で進められているメガソーラー開発が、SNSを通じて大きな注目を集めました。きっかけは、鴨川に通うサーファーが、地権者の許可を得て撮影した工事現場の空撮写真。広大な山林が伐採される様子に、多くの人が衝撃を受け、テレビや新聞でも取り上げられました。11月に行われた『市民主催・説明会』の様子と、参加者や主催者の声をメインにお届けします。

環境への懸念と市民団体の声

この事業は、鴨川市田原地区の山林146ヘクタール(東京ドーム約32個分)に約47万枚の太陽光パネルを設置するという、山林開発を伴うメガソーラーとしては日本最大規模の計画です。約37万本の樹木が伐採される予定で、自然環境への影響が懸念されています。


こうした状況に対し、2018年に発足した「鴨川の山と川と海を守る会」は、鴨川市の宝である自然と里山の暮らしを守るために情報を収集し、市民に知ってもらうために活動を続けてきました。代表の勝又國江さんは、支援者や協力者がいる一方で、『メガソーラー反対の集会』と思われてしまい、説明会に気軽に足を運んでもらいにくいことに悩んでいました。

文化と音楽でつなぐ、環境フェスティバルの開催

環境フェスティバルの案内 データ提供:鴨川の山と川と海を守る会
環境フェスティバルの案内 データ提供:鴨川の山と川と海を守る会

今年10月、誰でも参加しやすいように「鴨川市民有志の会」として、文化財である担ぎ屋台の笛や、鴨川市在住の歌手Yaeさんの演奏を取り入れた、環境フェスティバルを開催しました。9月にSNSなどで拡散された写真に衝撃を受けた市民の関心が高まっていたこともあり、700人が来場しました。

「鴨川の山と川と海を守る会」代表の勝又國江さん
「鴨川の山と川と海を守る会」代表の勝又國江さん

その後、より丁寧な情報共有を目指し、10月末と11月に2回、市民主催の説明会を開催。11月の説明会には約130人が集まり、勝又さんがこれまでの経緯を説明。「県や国の動きをしっかり注視して、市民ができることをしっかりと取り組んでいきたい」とあいさつしました。続いて、現地の状況、計画の詳細、許認可の流れ、市の対応、事業者の実態などについて報告し、参加者からの質疑応答も盛んに行われました。

事業者と違法伐採の発覚

資料を提示しながらの説明
資料を提示しながらの説明

この事業を進めるのは「AS鴨川ソーラーパワー合同会社」。2019年に県から条件付きで林地開発許可を取得しましたが、施工業者が見つからず一時休止。その後、2025年1月 に再開届を提出し、5月に工事が始まりました。


9月23日、鴨川の海を愛し、30年間通い続けているサーファーが、地権者の許可を得てドローンを使って建設工事現場を空撮し、その写真や動画がメディアやSNSで取り上げられました。

9月に撮影されたメガソーラー開発現場 ※地権者の許可を得て撮影してます 写真提供:鴨川の山と川と海を守る会
9月に撮影されたメガソーラー開発現場 ※地権者の許可を得て撮影してます 写真提供:鴨川の山と川と海を守る会

10月には、許可されていない区域での伐採が発覚。県職員が現地を確認し、約1.5ヘクタールにわたる違法伐採を指摘。工事中止と森林復旧計画の提出を求める指導書が事業者に渡されました。事業者は翌日、工事の一時中止を知らせる文書をWebページに掲載しました。

地元6団体が県に要請書を提出

10月29日、地元の「鴨川市漁業協同組合」「安房淡水漁業協同組合」「鴨川サーフィンクラブ」「鴨川里山を守る会」「鴨川の山と川と海を守る会」「鴨川自然と結いの会」が、安全を軽視した工事で災害が発生する恐れがあること、地元住民の理解が得られていないこと、無許可の区域が開発されていることなどを主張し、県に開発計画全体の見直しと、工事の中止を求めた要請書を提出しました。

「マトリョーシカ構造」の事業者と子どもたちの未来

事業者の実態は不透明で、登記簿によると、資本金30万円のAS鴨川ソーラーパワー合同会社と記されています。その親会社は、誰が出資しているのかが分からない、資本金50万円の「CES千葉合同会社」。複数の会社が間に入り、実質的な運営母体が見えにくい構造は「マトリョーシカのよう」と例えられました。


「通常のマトリョーシカは、開くと小さなマトリョーシカが出てきますが、メガソーラーの事業者はその逆で、開くと大きな会社が出てきて、鴨川の自然がまるで金融商品のように扱われている」と説明しました。

市民開催、メガソーラー現状説明会の様子
市民開催、メガソーラー現状説明会の様子

「緑豊かな山々が、3年4年と時間をかけながら破壊されていく風景を見ながら育つ鴨川の子どもたちは、どう思うだろうか」と会場に問いかけます。破壊の過程を目にするたび、無意識のうちに、「しかたがないことなんだ、自然よりもお金の方に価値があるんだ、東京の資金には勝てないんだ」というような思考を与えてしまうのではないかと懸念を示しながらも、「まだ間に合います」と、会場に訴えかけました。

市民の声が映す、鴨川の今とこれから

2022年9月に撮影された、鴨川有料道路の東側(写真右手)に広がる山林が、建設予定地の一部 写真提供:鴨川の山と川と海を守る会
2022年9月に撮影された、鴨川有料道路の東側(写真右手)に広がる山林が、建設予定地の一部 写真提供:鴨川の山と川と海を守る会

来場者で発言した方の中には、南房総エリアの人だけでなく、メガソーラー推進の会社に勤務しているという、相模原在住の方や、浦安市、佐倉市から訪れた方もいました。


「伐採した樹木をチップにし、農地に資材として数量無制限で入れられ、農地が産廃場として利用されている」と、他市での出来事を例に警笛を鳴らす人もいました。以下に紹介するのは、会場に訪れた鴨川市民の声です。


「川が氾濫して床下浸水で避難している場所のため、土石流が発生したらうちはやられると思っている。動物や昆虫の被害も相当出ると思う。今のうちに動物の件数を正しく把握して、今後の検証につなげてほしい」


「新聞やテレビで放送されるようになって、都市の人が注目してくれるのがうれしい。ここで売電された電気がどこに行くのかを、分かってくれた気がした。発信して、話をすることは大事だと思う」
「争いごとが嫌いで、声を上げるのは覚悟もいるので難しく、躊躇してしまう。でも、少しでも多く会を開いて、市民があと一つ勇気を出して、より多くの人に反対の気持ちを持ってほしい」


2025年9月に撮影されたメガソーラー開発現場 ※地権者の許可を得て撮影してます 写真提供:鴨川の山と川と海を守る会
2025年9月に撮影されたメガソーラー開発現場 ※地権者の許可を得て撮影してます 写真提供:鴨川の山と川と海を守る会

「普段から庭先に、キョンやタヌキ、ウサギが出ます。工事が始まって、聞きなれない鳥 や動物の声が聞こえるようになった。犬もずっと何かに吠えて、異変を感じています。自 然を壊したくないと考えています」


「世界で起きている戦争も含め、愚かな選択を止めることができない社会状況の中で、中止させるためには大きな市民の声のアクセルを踏み続け、開発にブレーキをかけるために市民一人ひとりが立ち上がるべきだと思う」


また、工事で使われている固化材が流れ出ないかと、心配する意見もありました。

主催者の思い。ピンチをチャンスに

多くの来場者の前で語る、「鴨川自然と結いの会」代表の大久保具美さん
多くの来場者の前で語る、「鴨川自然と結いの会」代表の大久保具美さん

主催者側から、前向きな意見もありました。

「7年の活動の中で、無力感を感じる。無知・無関心を止めて、問題意識を持って、選挙では意見が合う人に投票することが大切。まだ100分の1しか工事は進んでいない。今やっと、ニュースやテレビで取り上げられるようになった。開発予定のあの場所を、もっと有意義に使える場に替えることが、確実にできると思う」


最後に、鴨川自然と結いの会代表の大久保具美さんが、「今回の問題は決していいことではありませんが、市民一人ひとりが結束し、郷土を誇りに思い、この計画が止まったあとは、世界に誇って自慢できる鴨川ができるのではと、マイナスではなくプラスに考えています。まだまだ難しい問題は山積みです。諦めずに、継続して活動していきたいと思う。心の中に、開発を止めさせるいい鴨川をつくる気持ちを持って、ご協力をお願いします」と挨拶して閉会しました。

まずは知ることから。行動への第一歩

鴨川の山と川と海を守る会と「地球守・有機土木協会」の合同で、第8回生きものとしての土木研究会オンライン学習会特別編、『鴨川市のメガソーラーの現状と今後の展望、今起こっていること』が開催されます。


まずは知ることから、行動を起こしてみてください。子どもや孫たちに、残していきたい景色や環境を、今いる私たちが一緒につくっていきましょう。

【オンライン学習会詳細】
名称:地球守・有機土木協会オンライン学習会 第8回
   特別編『鴨川市のメガソーラーの現状と今後の展望、今起こっていること』
日時:11月25日(火) 19:30~21:15
参加費:無料(ドネーションを募り、その全額を鴨川の山と川と海を守る会の活動に寄付)
申込:下記公式ページより、要事前申し込み
主催者公式webページ(外部リンク)
鴨川の山と川と海を守る会公式ページ(外部リンク)
取材協力:鴨川の山と川と海を守る会

この記事を書いた人

鍋田ゆかり
ライター

鍋田ゆかり

Website: https://awaawalife.com/

バックパッカーで世界を旅して漂着したのは、千葉県房総半島の安房(あわ)。ボロボロ古民家を仲間と改修しながら、犬猫ヤギと暮らしはじめる。安房の自然にどっぷり浸かりながら、アウトドアや暮らしを堪能しつつ、魅力ある人や場所を紹介している。

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