【東京都杉並区】荻窪の路地裏にオープンして6年目。「美味しいものを少しずつ」をポリシーに、創意工夫に満ちた進化形の和食が味わえる店。
WRITTEN BY 酔街草

『珍味亭』
両隣りのもつ焼きとジンギスカンの匂いに挟まれて、白地に緋文字で大きく「台湾料理」と描かれた暖簾をくぐる。店内は、小さな厨房の前にカウンター8席と2名用テーブルが1卓のみという、この上なくコンパクトな造りで、いつも満席に近い状態だ。
カウンターの朱色の化粧板と丸椅子ゆえに、一見、昔ながらの街中華屋のように見えるかもしれないが、『珍味亭』はその名の通り豚の珍味で一杯呑めるという、杉並区界隈は及ばず都内でも貴重な台湾酒場なのである。

ほとんどの客が最初に頼むのが、この店一番の名物である「豚足」(700円)。八角の香りが漂う濃い目のしっかりとした味付けで、皮のゼラチン質はトロリと口の中でとろけてしまうほどだ。
骨の周辺はゴリゴリと弾力に富んだ歯ごたえで、指が汚れるのも何のその、手づかみにして豪快に貪り喰らうのがここでの流儀だ。
時間を置いて充分に味を染み込ませた豚足も旨いが、自分はタレがまだ熱々で湯気が出ている出来立てくらいが好み。何なら両方を半々で食べ比べしてみるのも一興だ。

「ビール大瓶」(750円)、「ビール小瓶」(450円)。中国酒はずらりと10種類近くが品書きに並ぶ。物珍しさに誘われて、ついつい色々な種類を試したくなってしまうだろうが、中国酒には度数の高い物もあるので、飲み過ぎにはくれぐれもご注意されたい!

「豚耳」(450円)と「バラ肉」(450円)」半々の2点盛り。好みでニンニク醤油につけて味変を楽しむ。ちなみに、ニンニクの追加やお代わりは自由だ。

ビールから台湾紹興酒へと切り替える間合いで、これまた名物の「炒米粉(焼ビーフン)」(700円)を注文する。具は、もやし、ニラ、豚コマ肉、と至ってシンプル。台湾の定番「滷汁(ルースイ)」が風味を際立たせ、しっかりと油を含ませつつもあっさりとした塩味。間違いなく病みつきになる旨さ!
”〆の麺”と言うよりも、この一皿を肴にすれば、さらに紹興酒のグラスが進むこと請け合いだ。この日は「魯卵(ローラン)」を1個、トッピングしてもらった。

「豚足」(700円)を筆頭に、珍味の種類は10種類ほど。意外に品数が少ないと感じられるかもしれないが、一人前でも結構なボリュームがある。記憶を辿ってみると、常連客からの要望で「豚足半分」(400円)や好きな組み合わせが選べる「2点盛」(500円)が登場したのは、割りと最近になってからの事。
品書きの中では、塩が添えられた「セロリ」(250円)が唯一の生野菜なのだが、なるほど油まみれになった口の中を浄化するにはもってこいなのだ。

戦後、台湾出身の初代が新宿の「思い出横丁」に開店し、昭和38年(1963年)に西荻窪の南口に移転。現在は、二代目の林重信さんと三代目の賢治さん親子が店を継いでいる。
話好きで、どんな話題にもついて来れる二人の博識ぶりには舌を巻く。自分のように親子との会話の掛け合いも楽しむために通い続ける客も少なくないはずだ。
地元住民から永く愛され続ける酒場には、その酒肴のみに留まらず、何かしら酔客を和ませる個性的な雰囲気が漂っている。
さてさて、今宵も大満足。ご馳走様!
『珍味亭』
住所:東京都杉並区西荻南3-11-6
アクセス:JR西荻窪駅南口より徒歩1分
営業時間: 17:30~23:00
定休日:土曜日、日曜日、祝祭日
*現金のみ、予約不可
(この記事は「Yahoo!ニュース エキスパート」2023年9月28日掲載時の内容です。現在の価格、定休日などは最新情報にてご確認ください)
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