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千葉県 -南房総市

茅葺き屋根の茅はどこから来るの?地域の便利屋さんが維持する茅場の現状と茅の需要【南房総市】

八代トータルサービス株式会社代表取締役の八代利弘さん
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鍋田ゆかり

南房総に残る、茅(かや)文化。その根底を支える“茅”。茅がなくては、茅葺き屋根の存続はできません。茅は耕作放棄地でも見かけますが、毎年刈り取ったものでないと使い物にならないそうです。数は少なくても、茅を必要とする人たちがいる。その人たちに茅を提供している、八代トータルサービス株式会社の八代利弘さんに話をうかがいました。

南房総の便利屋さん

田舎暮らしは、草刈りや山の管理、農作業やちょっとした大工仕事など、自分や地域でやらなければいけないことが山ほどあります。過疎化が進み、高齢者が多い地域では、今までのように全てを自分や家族でこなすことが難しくなっているところも、少なくありません。そんなとき頼りになるのが、地域の便利屋さんです。

自分のことを「便利屋」と称する、八代トータルサービス株式会社の八代さんは、建設・土木事業、農業ハウス組み立てや解体、林業、草刈り、ハウスクリーニングなど、南房総で必要とされる場面で活躍しています。そんな便利屋業の一つに、茅場(かやば:茅を刈るところ)の仕事があります。

作業をする人が小さく見える(真ん中下辺りの緑色)茅場

八代さん「茅場を管理していたオーナーに頼まれて、毎年うちから人手を出していました。オーナーが海外へ行くことになったとき、茅場を残したいから引き継いでほしいと言われて」

2017年、3反(約3,000平方メートル)ほどの茅場を含め、いくつかの茅場を引き継いだ八代さんですが、離れた場所にある小さな茅場は管理が大変だったため、現在は3反の茅場のみを管理しています。

茅場の一年

自分よりも背の高い茅を刈り、束ねる人たち
自分よりも背の高い茅を刈り、束ねる人たち

茅の株は毎年大きくなりながら自然に成長しますが、毎年刈り取らないと茅葺きの材料として使いものにはなりません。昔は集落ごとに茅場を持っていて、集落のみんなで茅を刈り取り、今年は〇〇さん宅、来年は△△さん宅、と順番に屋根の葺き替え作業をやっていたという話をよく聞きます。それらの作業は、米作りや畑の作業がひと段落する冬に行うことが多かったようです。

八代さんが管理する茅場では10月に雑草を刈り取って、茅を刈り取るとき邪魔にならないように準備をします。12月の終わりごろから茅を刈りはじめ、1月末には刈り取りを完了。刈る人1人に対して束ねる人3人が基本で、6人ほどで作業を進めた場合、刈り終わるまでに1週間を要します。

刈り取った場所には、束ねた茅が全面に置かれている

束ねた茅は10日間くらい茅場で乾燥させ、持ち上げたときに軽くなっていたら乾いた証拠。2月頭くらいに、乾燥した茅を保管場所の倉庫へ運び、保管します。斜面にある広大な茅場から茅を運び出す作業は、5日ほどかかります。毎年1000~1200束の収穫がありますが、台風で倉庫に雨漏りが発生したときは、1000束の茅がダメになったこともあるそうです。

カニのように歩いて、茅とのダンスを楽しむ

現在の茅刈りは、草刈りのときに使う刈払機(かりはらいき)で、少しずつ薄く刈って一方に倒していきますが、昔はどうだったのでしょうか?地域に住む80代の方に話を聞いてみると、20歳の頃に茅刈りをやっていたというお爺さんがいました。

「背負子(しょいこ:背負って荷物を運搬するための道具)に束ねた茅を横向きに積んでいくから、周囲に引っかからないようにカニみたいに横歩きして、リキシャ(小型二輪車)が来れるところまで運んだんだよ」

右が背負籠(しょいかご)、左が背負子
右が背負籠(しょいかご)、左が背負子

八代さんいわく、茅の長さは短いときで2メートル20センチくらい。長いものだと3メートルに達するものもあるそうです。それを横向きに積み上げて背負い、茅が木などの障害物に当たったりひっかかったりしないよう、カニ歩きをして運んだというのです。もちろん刈払機などなく、茅専用の手鎌を使ったそうです。

同じ南房総で今も茅葺き屋根を保存し続けている人は、次のように話しました。「昔は自分で茅を刈りに行ったのよ。背負子をしょって、30分かけて山を登って、刈った茅をケーブルで降ろして、軽トラに積んで。茅刈鎌で刈っていたのが、草刈り機(刈払機)に変わっていって。茅を束ねるときは、丈が長いから茅とダンスしてるみたいになって、束ねていたんだよ」

ダンスするように茅を束ねる人

茅を買い求め、茅文化を継承する人たち

曲がった茅を取り除き、丁寧に束ねられた小束の価格は600円(+税と送料)。この茅は、南房総にいる数少ない茅職人や、職人を通じて紹介されたお客たちが買い求めにきますが、お客の数は年々減っているといいます。資金があり、文化財保存のためだと一気に茅の葺き替えを行えますが、買い求めに来る人の殆どは今ある茅葺き屋根の補修用として、30~50束単位で購入する人たちです。それでも倉庫の茅はほぼ売れてしまって、去年の茅が少し残っている程度なのだとか。

葺き替える場所や工程により、押し切りで茅を切って使うことも

集落で採れる素材を使って家を建て、補修し続けることによって今も残っている茅葺き屋根。茅葺き屋根の家が無くなれば、茅場が存在する意味も失くなるでしょう。それは逆も同じで、茅場が無くなれば、茅葺き屋根を存続することもできなくなります。地域に茅がなければ、地域外から茅を運ばなければいけません。地域の職人が途絶えても同じです。茅代だけでなく輸送コストも増え、職人の交通費や滞在費もプラスされ、茅葺き屋根の維持にはますますお金がかかるようになってしまいます。

南房総は辛うじて茅文化が存続していますが、いつどの持ち場に穴が開いてもおかしくない状況だと思います。それでも、まだ職人がいて、茅場があって、茅葺き屋根を維持しようとする人たちがいる。この先も、茅文化が継承されていくことを願わずにはいられません。

茅の葺き替えに使う道具
茅の葺き替えに使う道具

取材協力:八代トータルサービス株式会社

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この記事を書いた人

鍋田ゆかり
ライター

鍋田ゆかり

Website: https://awaawalife.com/

バックパッカーで世界を旅して漂着したのは、千葉県房総半島の安房(あわ)。ボロボロ古民家を仲間と改修しながら、犬猫ヤギと暮らしはじめる。安房の自然にどっぷり浸かりながら、アウトドアや暮らしを堪能しつつ、魅力ある人や場所を紹介している。

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