【千葉市】小さなパン屋、モワティエさん
WRITTEN BY 格さん
at FOREST株式会社が運営する「循環葬 RETURN TO NATURE」が、関東初となる拠点をオープンしました。お墓に入る、入らない。墓石を残す、残さない。循環の一部になる、ならない。自身や大切な人が人生を終えたとき、あなたはどんな選択肢を選びますか?
南房総市にできた循環葬の森お披露目見学会に参加し、現場や参加者の様子をレポートしながら、命が尽きたその先のことを真剣に考えてみました。
毎年2月に、多くの参拝者が訪れる「まの大黒福祭」を開いている真野寺は、1300年の歴史を有しています。広大な敷地は、4万平米(約12,000坪)。その中でも、何十年と人が入らず手つかずだった場所を整備した森に、循環葬に興味を持つ12名の見学者が足を踏み入れました。

案内してくれたのは、at FOREST株式会社代表取締役の小池友紀さんと、スタッフのみなさん。強い日差しが照り付け、気温もぐんぐん上昇する8月の昼間。森の中は鳥の声が身近に感じられ、私たちが生活している世界から一歩自然側に踏み込んだ感覚になりました。

木々がつくる日影の下、足元はふかふかの土。見上げれば虫のアート作品のような葉がたくさん茂り、所々から植物のいい香りが漂ってきます。四つ又のクスノキは、この森のシンボルツリー。木々に囲まれた中に現れたウッドデッキには木製の椅子が設置され、森林浴を楽しめる空間になっていました。

ウッドデッキから更に奥へ進むと、丸太で囲まれた島がある埋葬エリアに着きました。30年放置されて死んでいたヒノキの人工林を間伐し、枕木として再利用しながら移植や補植をして、何十年後かには森になるよう手を加えた場所。ここで、小池代表が循環葬のデモンストレーションを行いました。

地表を掘り、掘り出した土とパウダー状にしたご遺骨をよく混ぜ、穴に戻します。この作業を人任せにせず、家族が故人を自らの手で森に還します。上から、微生物がいる葉や小 枝を置いて循環を促し、穴を掘る前の元の状態にします。

埋葬エリアは、「人だけの循環葬」とペットと一緒に埋葬してもらえる「循環葬 and ペット」のエリアに分かれています。家族同然に過ごしてきたペットと一緒に眠り、森の一 部になれるというのも魅力の一つです。

土壌環境アドバイザー、森林アドバイザー、ランドスケープパートナーたちと共に、100年~200年の長期スパンで計画を立て、放置林を再生させて未来に遺し、人も動植物も健やかに過ごせる森づくりをしています。今年、真野寺の森に埋葬できるのは100名限定。
小池代表「土壌調査を行いながら、埋葬可能な数を変更しています。埋葬場所も、どこかに集中しないように土壌学の観点で決めて進めています」
この日は訪れませんでしたが、上からこの埋葬エリアを見下ろせるスポットもあるそうで、「森の成長を一緒に見届けてもらえれば」と話していました。

真野寺はもともと墓地を持っていません。真言宗には「宇宙一体」という考えがあり、人 間だけが特別にお墓に入るのではなく、他の生き物たちと同じように森に戻る循環葬に賛同したそうです。
RETURN TO NATUREのwebサイトでは、伊藤尚徳住職の想いも紹介されています。
❝近年の日本では、管理の行き届かなくなった森が全国に増えつつあります。森の荒廃は生態系のバランスを崩し、獣害などの被害も深刻さを増しています。「循環葬」という取り組みが、こうした森を守り、再び人と自然とが調和の中で共に生きるための、一つのきっかけとなることを願ってやみません。❞
小池代表「100年、200年後、例え人がいなくなったとしても豊かな森が循環し続け、生 き続けることを目指しています」

森から本堂へ戻ると、真野寺の愛嬌のあるネコたちが出迎えてくれました。本堂や森づくりの様子をパネルにした写真を見学し、一休み。その後、参加者全員マイクロバスに乗り込み、レストランで食事をいただきながら、スタッフや参加者のみなさんと交流しました。
テレビで循環葬のことを知り、墓じまいに興味があって参加したという女性に参加理由を伺いました。
「墓じまいという大変な行為を後に遺さず、自分の代で終わらせたいと思っています。今は実家の墓じまいを考えていますが、将来的には嫁ぎ先の墓じまいもあります。そのころには、この循環葬が主体になっているのでは、と期待しています」
先立たれた奥様のお墓を探したまま、3年経ってしまったという男性にも話を聞きました。
「本人には海にまいてくれって言われたけど、娘から『まいちゃったらママの場所がわからなくなる』と言われて探しているところです。樹木葬はピンとこなくて、こっちはまた違うかなと思って来てみました。墓碑もなく、骨壺に入れられることもないので、検討の余地はあると思います」

とてもいい場所だけれど、距離があるから家族が通いにくい点を心配している女性に対し、「そういうお客様もおられますが、『こっち方向に祈ってくれたらそれでいい』と、家族に言っている方もおられました」と、小池代表は事例を話しました。
確かに、イスラム教徒がメッカの方角に祈るように、家族が眠る森の方角に向かって祈るという考え方は、私にとってとてもしっくりきました。

参加者から小池代表に、なぜこの仕事を始めたのか質問がありました。小池代表の父親の実家は岡山県で、お墓も岡山にありましたが、家族はずっと兵庫県で暮らしていました。これからも、誰も岡山に住むことはないため両親が墓じまいを考え、調べ始めます。すると、樹木葬でも墓石と骨壺があり、自然に還らないことが分かりました。
小池代表「どういうこと?思っていたのと違うと思いました。母も私も自然回帰を望んでいましたが、母は世の中こんなもんだと諦めていました。私は、ここに100万や200万を払いたくないと思いましたし、人生最後の大きな買い物なのに、諦めて買うのはおかしいと思いました」
今までの埋葬方法や、その管理として永遠にお金がかかり続ける仕組みに疑問を持った小 池代表は、「習慣にとらわれず、部外者の私にしかできないやり方で、動物たちと同じように自然に還る選択肢を作ろうと思いました」と話しました。
会食中もその後も、一切お金の話や売り込むようなトークがなく、参加者たちの質問に丁寧に答える小池代表やスタッフたち。その様子を見た参加者は、「ランチを提供して、何もセールスしないのはすごいですね」と、驚いた様子。小池代表は、「森を散策して、いい気分で帰ってほしいので」と笑顔を見せます。

生前から、私たちはいつでも森に入って森林浴を楽しみ、森の成長を見守ることができます。そして一生を終えたあと、慣れ親しんだ森の養分となり、自然に還ることができます。
森に還った私に会いたい人は、森の方角に声をかけてくれてもいいし、観光ついでに南房総を訪れ、森を散策しながら私のことを想い、森林浴で元気になって日常へ帰ってくれたら、こんなにうれしいことはない。見学会に参加して、そんな想像が果てしなく膨らみました。
私たちの死が、放置されて荒れている森の再生に役立つ。そう考えると、「死」というものがとてもポジティブなものに思えます。いつ訪れるか分からない人生の終わりに恐れを抱く必要はなく、お墓に入るのが当たり前でもない。自然に還るという選択肢があることを知ってもらえればと思いました。森に還るという選択は、自然と共に生き、そして自然に還るという、人間本来の営みに立ち返ることなのかもしれません。
【詳細情報】
名称:高倉山 実相院 真野寺
住所:〒299-2524 千葉県南房総市久保587
公式webサイト(外部リンク)
取材協力:at FOREST株式会社
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バックパッカーで世界を旅して漂着したのは、千葉県房総半島の安房(あわ)。ボロボロ古民家を仲間と改修しながら、犬猫ヤギと暮らしはじめる。安房の自然にどっぷり浸かりながら、アウトドアや暮らしを堪能しつつ、魅力ある人や場所を紹介している。
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