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千葉県 -南房総市

「絵があるから、良かった」。寝たきりの作家が描く、日常の輝きを初めての個展で【南房総市】

パリオリンピックに向けて描いた「猫のバスケットボール」2023年作
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鍋田ゆかり

難病と戦いながら、寝たきりになってもパソコンのマウスを使って創作活動を続けている作家、高橋良宗(よしひろ)さんが、南房総にある「ギャラリーMOMO」で初めての個展を開催しています。

初めての作品は

全身の筋肉が徐々に衰えていく難病、筋ジストロフィーを1歳のときに発症した高橋さんは、小学校6年生のときから車椅子生活になりました。絵は、小学校の授業で水彩画を描いた程度。高校の授業で、パソコンを使ったグラフィックデザインを学びました。


初めての作品は、高校3年生のときに描いたクジラ。難病と闘う子どもたちの夢を叶えるボランティア団体「メイク・ア・ウィッシュ」の協力で、ホエールウォッチングをする夢を叶えてもらったときに見た、クジラの絵です。

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橋さんがパソコンで初めて描いたクジラの絵 写真提供:高橋良宗
高橋さんがパソコンで初めて描いたクジラの絵 写真提供:高橋良宗

本格的に描き始めたのは、高校卒業後にカレンダーを作るワークショップに参加し、カレンダーのイラストを担当してから。自分の感情を落とし込んで、作品作りに没頭しました。

限られた時間に込める情熱

子どものころから民謡が大好きだった高橋さんは、朝食後に毎日民謡を歌ってから、絵を描くのが日課でした。2023年10月に気管切開の手術を受け、その後寝たきりの状態に。歌えない、食べられない、話せない。それでも「絵があるから、良かった」と、YouTube動画などからインスピレーションを得て描き続けています。

お腹の上に「ワンキーマウス」を置いて、作品作りをする高橋さん 写真提供:高橋朱美
お腹の上に「ワンキーマウス」を置いて、作品作りをする高橋さん 写真提供:高橋朱美

長いものだと、半年かけて描くこともありましたが、描き始めた当初は、1~2カ月に1枚のペースで描いていました。今は身体が動かないので、わずかに動く指先で操作ができる「ワンキーマウス」を使い、1日に1~2時間の作業をするのが体力的にやっとです。


描かないときでも、どんな絵をどのように描くか、頭の中でイメージを膨らませて、短い作業時間に活かせるようにしています。

観察と想像、日常から生まれた作品たち

高橋さんが描くのは、セミの脱皮のようすを部屋から6時間観察して描いたものや、「お父さんの靴の数は、足が2本にしては多すぎる」という会話から生まれた、靴を履いたタコの絵。


部屋から見える切り株に、毎日鳥が通っている様子を見て、「何があるのか見てきて」と母の朱美さんにお願いすると、切り株の中に卵が。その写真を見て描いた、切り株と鳥と卵の絵。


「猫とカラスが干物の奪い合いをしている」と朱美さんから聞くと、その様子を動画で撮影してもらい、絵にしました。身の回りの日常を、高橋さんならではの視点で描いています。


ギャラリーには60点の作品が並び、2014年から毎年制作・販売しているカレンダーの絵も、一目でわかるようになっています。

カレンダーで使われた作品
カレンダーで使われた作品

年代ごとに作品を見ると、手術後の心の葛藤が垣間見られるものや、恋をしているときの明るいタッチのものなど、高橋さんの心模様が見て取れます。

「小さなギャラリーから広がるチャンス」オーナーの想い

ギャラリーMOMO間瀬藤江オーナーは、高橋さんの絵を偶然見かけたとき、「おもしろいと思った。こういう人の作品を扱うのが、ギャラリーの仕事の一つだと思った」と、今年1月の出会いを振り返りました。

「発想が豊かで、誰が見ても楽しめる作品。(寝たきり状態のため)見られる世界は狭いはずなのに、膨らませるのが上手くて小さなことに感動する心を持っている。小さいギャラリーだけど、多くの人の目に触れてチャンスが広がっていけば」と、作家としての第一 歩を踏み出した高橋さんにエールを送っていました。

元気になる絵

展示の様子
展示の様子

ギャラリーは、初日から多くの人が入れ代わり立ち代わり訪れ、在廊していた朱美さんに絵のエピソードを聞いて、楽しんでいました。


ここ3年ほど、毎年カレンダーを購入しているという男性は、「カレンダーと同じ絵も、額に入ると雰囲気が違っていいですね。毎年気に入る絵が上書きされていきます」と話していました。


「元気になる」「気持ちが温かくなる」というような感想が多く寄せられている通り、優しい絵の中にユーモアがあり、クスッと笑える絵もたくさん並んでいました。


「どの作品も自分の分身です」と語る高橋さん。慌ただしい日常から少し離れて、その分身たちに会いに行ってみませんか。

【展示会詳細】
名称:高橋良宗作品展
期間:11月13日~11月17日
時間:12:00~17:00
住所:〒299-2512 千葉県南房総市岩糸1093 ギャラリーMOMO
高橋さんの公式webページ「好きが集まるアトリエ 良の里」(外部リンク)
取材協力:高橋良宗、高橋朱美、ギャラリーMOMO

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この記事を書いた人

鍋田ゆかり
ライター

鍋田ゆかり

Website: https://awaawalife.com/

バックパッカーで世界を旅して漂着したのは、千葉県房総半島の安房(あわ)。ボロボロ古民家を仲間と改修しながら、犬猫ヤギと暮らしはじめる。安房の自然にどっぷり浸かりながら、アウトドアや暮らしを堪能しつつ、魅力ある人や場所を紹介している。

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