【千葉市】小さなパン屋、モワティエさん
WRITTEN BY 格さん
房州(南房総市・館山市)で受け継がれている伝統工芸品の房州うちは、房州産の女竹(めだけ)から作られています。1本の竹を48~64本に割いて骨を作り、骨を編み……。全部で21の工程を経て作られています。扇風機やエアコンに取って代わられつつある現代ですが、房州うちわは国の伝統工芸品として愛され続けています。そんな房州
うちわの伝統を引き継ぐべく、房州うちわを作り続け、房州うちわ唯一の伝統工芸士とともに、フランスで開催された「パリ・ジャパンエキスポ」にも出演した吉良明美さんに話をうかがいました。
吉良さんが房州うちわを作り始めたきっかけは、房州うちわ振興協議会が開催した「房州うちわ従事者入門講座」でした。

吉良さん「伝統工芸品に興味がありました。これは失くしちゃいけないものだと思うんです。色々広がって、楽しいことがたくさんあるかなと思って受講しました。ただ、生活にはならないというのはすぐにわかりました。身に付けるまでにすごい時間がかかるから、残したいけど時間がかかる」
房州うちわを作り始めて8年目の吉良さんは現在「認定職人」として活動しています。

南房総市内には、房州うちわの工房「うちわの太田屋」があります。4代目の太田美津江さんは、房州うちわとして初めて伝統工芸士に認定されました。後継者育成にも力を入 れ、「房州うちわ振興協議会 職人認定制度」を定めています。館山市・南房総市在住で作られている方、房州うちわ従事者入門講座を受けて作り始めた方など、房州うちわの定義に沿って職人を認定しています。たとえ見た目だけが房州うちわであっても認められず「この土地で受け継がれるものを共有すること」を大切にしています。
吉良さん「出来上がりだけ見てもわからないけど、作業工程中のこだわりや技術、実際に作ってきた人からでないと教われないことがある。この形になっていても、独自の作り方 で作っているものは本当の房州うちわなのかなって。作り方も、この地で受け継がれているものをみんなで協力して残していきたい」
現場に身を置いて学ぶ、職人の手元と仕事の流れ
房州うちわの材料費は「ものすごく高い」と、太田さんは言います。せめて自分で作ったものを売って、そのお金で材料を買うくらいまでになってほしいと考え、注文が入ると房州うちわ作りを続けたい認定職人たちに作ってもらい、材料や道具を揃える費用に充てられるように配慮しています。
太田さん「仕事が入ると張り合いにもなるし、人の仕事って緊張もするし、いいことじゃないかな。数多くやった方が慣れて仕事が早くなるし、自分に有利だと思う。すごく安いんですけど、今まで30本しかできなかったのが70本になり100本になり。自分が注文を受けるようになったとき、あの人だったらこれだけやってくれるっていう信用にもつながるし」
工房として仕事が完結している太田屋は本来、人に仕事を頼む必要はなく、弟子をとることもしていません。そんな中、吉良さんは仕事を分けてもらうことを口実に、工房で作業をさせてもらうことがあります。

吉良さん「自分のやり方を見てもらうのと、太田さんの手元が見れるのと、仕事をどう回してるのかをちらちら見ながら仕事ができます。うちわ屋さんの仕事の流れなんて、全然分からない。工房に来ると、この間ここにあった骨が今、どこへいったんですかって感じで。重ね方も無造作に見えますけど、他で目にすることがなくて特殊なんです。反物の扱い方だって太田さんは素早く裁断してますけど、生地を手にするだけで私なんかはどうしたらいいかこんがらがって大変です。現場に身を置くと得るものが多いです」
房州うちわの工房として唯一残る太田屋での貴重な学びについて、吉良さんは熱く語りました。それに対して太田さんは、「えーあんなことが勉強になっちゃうの?私も新鮮」と笑います。
「房州うちわを作り始めると自分で決めれば、すぐに始められるものだと思っていた」と話す吉良さん。実際は材料や道具の調達に苦労し、作り始めるための準備から始めなければいけないことに不安もあったそうです。今は自分で作った房州うちわを販売できるようになり、少しずつ道具を揃えているところです。

そんな中、初めて手に入れた吉良さんの道具は「割き台」。足の重みで押さえた割き台に1本の竹を刺し、うちわの骨を形作るために細かく割いていく工程で使います。割き台として完成品が売られているわけではないので、見本を持参し、どう使うかを説明した上で大工に作ってもらいました。
うちわ作り体験では、子どもから大人まで、多くの人たちに房州うちわ作りを楽しんでもらっています。多いときは、一度に100人以上の人に指導することもある太田さん。そんなときは、吉良さんや従事者たちが事前準備や当日の補佐を手伝います。
入門講座では太田さんが割きを教え、それ以外の工程を受講終了者たちがみんなで教えています。

吉良さん「全然できない3年目くらいから『できなくても今なら一緒に見てあげる』て言 われて、付き添ってもらえるなら心強いかなと思って。今なら太田さんに教えてもらえるから、見てもらえるうちに挑戦しようと思いました」
太田さん「教える立場になると再発見できる部分があるんですよ。いずれ吉良さんも、仕事として大人数を引き受けるようになるから、今練習しておけば先々絶対プラスになる」
吉良さんはイベントで房州うちわ作りの体験を行うこともあり、私も作らせてもらいました。事前に用意されていたうちわの骨を均等に広げ、自分で選んだ紙を貼ってハサミで骨 ごと裁断し、ヘリを貼り付けました。竹を使って手作りされた骨に、自分で紙を貼ってうちわを仕上げるなんて、人生初めての体験に感動しました。
京都の染屋に依頼をした風神雷神のちりめんの布を貼ったり、猫のデザインのうちわに鈴を取り付けたりと、新しいデザインの房州うちわを作り出している太田さん。今後作ってみたいうちわについて聞いてみると「一通りやっちゃったから燃え尽きました」と即答。吉良さんは「無いです。それより手が早くなりたい」と答えました。
地道にコツコツと作り続けている吉良さんの作品は、JR内房線岩井駅から徒歩1分の場所にある「房州うちわ会館」で購入可能です。職人と直接言葉を交わしながら、お気に入りの房州うちわを手に入れてください。
【詳細情報】
名称:うちわの太田屋
住所:〒299-2404 千葉県南房総市富浦町多田良1193
電話:0470-33-2792
※うちわ作り体験については、事前に電話にてお問合せください
公式webサイト(外部リンク)
名称:房州うちわ会館
住所:千葉県南房総市市部140-3
※吉良さんのうちわを販売するのは水曜日
公式webサイト(外部リンク)
吉良さんのinstagram(外部リンク)
取材協力:うちわの太田屋、吉良明美さん
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バックパッカーで世界を旅して漂着したのは、千葉県房総半島の安房(あわ)。ボロボロ古民家を仲間と改修しながら、犬猫ヤギと暮らしはじめる。安房の自然にどっぷり浸かりながら、アウトドアや暮らしを堪能しつつ、魅力ある人や場所を紹介している。
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